虹の彼方に レズビアン・ゲイ・クィア映画を読む

『虹の彼方に』編集日記 (1)  出雲まろう

Are you a friend of Dorothy?
 レズビアン・ゲイ・クィア映画の中から興味深い作品を取り上げて、評論・エッセイを書いてくださいと、この半年間ほど、いろんな方々にお願いしてまわっていた。きっと断られるだろうなあ、なんて本心はドキドキしながら。ラッキーだったのか、執筆者のみなさんには、超多忙な時間を割いて「虹の彼方に」のための原稿を書いていただけた。添付された原稿をプリントアウトして読んだときのうれしさといったら。こんな方にも原稿いただけたんだ、ウルウルウルでした。なかには手描きの原稿用紙をファックス送信してくれた古典派も・・。ちなみにその人の名はドラァグクィーン界の女性第一人者エミ・エレオノーラさまでした。ちょうどいまごろは劇場版「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のイツァーク役で汗を流していることでしょう。これ読んだ方、ぜひ観に行ってください、ホントすごいから。

 ところでこの本のタイトルはなぜ「虹の彼方に」なんでしょか。それは、映画「オズの魔法使」の主役ドロシーを演じたジュディ・ガーランドが昔からゲイのアイコンだったから。その映画の主題曲が「虹の彼方に」なんです。今回の執筆者のひとりであり、東京・国際レズビアン&ゲイ映画祭のデレクターだった川口隆夫様説によると「Are you a friend of Dorothy?」とは、「あなたも、ゲイなの?」という意味。責任編集を担当した私ことマロウもニューヨークでライダース・ジャケットの襟にドロシーのバッジをつけて出掛けたら、ハーレイに跨ったゲイのおじ様方と良き雰囲気でお話が弾みました。

あと、この本のキーワードは国際性・多様性かな。去年の冬に来日して、お茶大や津田塾大で講演したジュディス・ハルバースタムも執筆者のひとり。ジュディスとは7月上旬にバンコクで行われるアジア・クィア会議で再会する予定です。その報告も、いずれここで。あとは一日でも早く出版したいなあー、と実務編集担当者さんにがんばってもらっています。乞う、ご期待!!!

『虹の彼方に』編集日記 (2)  出雲まろう

 アジア・クィア会議で、『チャンバラ・クィーン』(2002年パンドラ刊)の発表をするためバンコクへ行ってきた。美空ひばり主演の『花笠若衆』について詳しく紹介するつもりが、「書く」のと「話す」のでは大違い。発表はアッという間に終わってしまった。プログラムには他にも興味深い研究発表がいっぱい紹介されていたのだが、なにしろ全部英語。パートナーに通訳してもらったけど、ぜんぜんついていけなかった。でも、「カーミラ」編集長のメイミーや他の研究者の方たちと話題のクラブ「ベッド・サパー・クラブ」で、まったりとした時間を過ごしたり、今回の執筆者のひとりジュディス・ハルバースタムたちと半年ぶりの再会をして遊んだり、楽しいこともありました。『虹の彼方に』のために「ボーイズ・ドント・クライ」の映画批評原稿を書き下ろしてくれたジュディスは、超人気有名スタア学者なのねと、会議でも改めて実感。そうそう、もうひとり本書執筆者のパク・ジンヒョン氏にもバンコク最終日のボート・ツアーでやっとお会いした。メールでやりとりしていただけなので、どんな人かなと思っていたけど、スキンヘッドのとても優しい雰囲気、やっぱりパクさんに書いてもらってよかった。東京に戻ったら、すぐに東京レズビアン&ゲイ映画祭へと突入。校了が大幅に遅れたけど、なんとか15日には刷り上り、映画祭ギリギリに間に合った。

『虹の彼方に』編集日記 (3)  出雲まろう

 神楽坂阿波踊りをパスして、お茶の水女子大学のCOE研究会へ。映像作家Amie Williamsさんが撮ったドキュメンタリー作品『Tales from Las Vegas Women』を観た後、パンドラ社長・中野理恵さんが日本における映画配給について、通訳泣かせの早口でコメントするのを面白く拝聴した。上映会&トークのあとは、本書の執筆者でもあるお茶の水女子大学大学院教授の竹村和子氏、武蔵大学教授の吉川純子氏そして研究会の方たちと近くのインド料理店にて、食ったり、飲んだり、しゃべったり、リラックスした楽しいひとときを過ごさせていただいた。映画『フォービドン・ラブ(邦題 女たちの禁じられた恋)』について執筆してくださった吉川先生からパルプフィクションを安く売っているという古書店をお聞きしたので、次回アメリカに行った折には寄ってみようっと。じつは昔、或る劇団で7年間も専任美術スタッフをしていたせいか、映画に登場するセットや小道具には特に関心があり、25年くらい前から50年代〜60年代製スノードームを集めている。映画に出てくるスノードームなら、まずオーソン・ウェルズの『市民ケーン』、そしてサンドラ・ブロック主演の『あなたが寝てる間に』やデミ・ムーア主演『夢の降る街』が有名だが、レズビアン・ゲイ映画にもゲイ・ゲームズ出場を夢見てアイス・スケートの練習に励む『シン・アイス』という小品がある。『フォービドン・ラブ 女たちの禁じられた恋』に登場する小道具は一冊のパルプフィクションだが、単なる小道具以上に重要な歴史的資料で、社会背景を考えるとものすごく面白い。そのあたりのことは、ぜひ本書『虹の彼方に レズビアン・ゲイ・クィア映画を読む』を読んでください。同じタイトルの本やCDがたくさんあるけど、副題まで入れるとすぐに検索できます。ところでパンドラ・ホームページ上の編集日記連載はこれでおしまい、だって。なーんだ、なんだ。ウェブ日記なんてぜんぜん関心なかったところ、書き始めてみると面白かったのにぃー。なので、まだ、やめられないから、ブログを始めることにしました。ブログのタイトルは、このまま「出雲まろうの編集日記」にするので、ぜひ検索してみてください。