監督/マン・リムチョン(文念中) 音楽/大友良英
主な登場人物/アン・ホイ(許鞍華)・ナンサン・シー(施南生)
・ツイ・ハーク(徐克)・フルーツ・チャン(陳果)
ティエン・チュアンチュアン(田壮壮)
・ホウ・シャオシェン(侯孝賢)・アンディ・ラウ(劉徳華)
・ジャ・ジャンクー(賈樟柯)・シルヴィア・チャン(張艾嘉)
2020©A.M. Associates Limited
香港/2020年/119分/DCP/日本版字幕:鈴木真理子
後援:香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部
協力:大阪アジアン映画祭/鮑智行/柳川由加里
配給:パンドラ
アン・ホイ~
アジアの女性監督のトップランナー!
ヴェネチア国際映画祭
生涯功労賞受賞!
イントロダクション
『客途秋恨』(1990年)『女人、四十。』(1995年)などの作品で、世界的に知られる今年74歳になる香港映画の巨匠アン・ホイ。1980年代以降、ツイ・ハークやパトリック・タムらと共に、<香港ニューウェーブ>の旗手として香港映画の発展に大きく貢献した40年に及ぶ映画人生。
人生は映画とともに
香港の現在とこれまで そして
これからも 香港のために映画を撮り続ける
ダイナミックな時間の流れに沿いながら、アジアの女性監督のトップランナーとしての歩みでもあった。香港の文化を重んじ、ロンドンで映画を学んだ彼女は、まさに“東洋と西洋の出会い”“香港魂”を体現する存在でもある。今日に至る香港映画の発展に大きな貢献を果たしてきた彼女の実像に迫る。
アンディ・ラウ、シルヴィア・チャン、ホウ・シャオシェンなど
中華映画界の重鎮たちが語る実像とは!
日本人の母との慎ましやかな日常生活、香港への思い、女性としての生き様、エネルギッシュな撮影風景。そしてシルヴィア・チャン、アンディ・ラウ、ホウ・シャオシェン、フルーツ・チャン、田壮壮など香港・台湾・中国映画界の重鎮たちが、彼女の作品と人柄について語り尽くす。
マン・リムチョン監督は本作で
2021年香港電影監督会新人監督賞受賞!
監督のマン・リムチョンは、美術監督・衣装デザイナーを務めた『君のいた永遠(とき)』(1999年/シルヴィア・チャン監督)で香港電影金像奨芸術監督賞を受賞。『花様年華』(2000年/ウォン・カーウァイ監督/カンヌ国際映画祭2000年最優秀男優賞[トニー・レオン]他多数)のアート・ディレクターも務めた実力派。初監督となる本作で見事、2021年香港電影監督会新人監督賞を射止めた。アン・ホイ監督作では『男人四十』(2002年)の芸術監督、『黄金時代』(2014年)の衣装デザインなども担う。
「あまちゃん」「いだてん」の大友良英が奏でる、
香港と映画への想い
音楽はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽で日本レコード大賞作曲賞等、数多くの映画やテレビの音楽を手がける大友良英。大友は『女人、四十。』でもアン・ホイ監督の音楽を手がけ、本作は2度目のタッグとなる。
アン・ホイ(許鞍華)について
1947年5月23日~、中国人の父、日本人の母のもと、中国遼寧省鞍山市に生まれ、1952年、5歳の時に家族で香港に移住。香港大学で英語と文学を学んだ後、ロンドンの映画学校で2年学び、香港に戻り武侠映画の巨匠、キン・フー(胡金銓)の助監督を務める。
1979年『瘋劫(シークレット)』で監督デビュー。実験的な映像表現を用いた本作が香港映画界に衝撃を与え、ツイ・ハーク(徐克)、パトリック・タム(譚家明)らとともに「香港ニューウェーブ」の旗手として香港映画界を牽引し、社会派ドラマからホラー、コメディ、ラブストーリーまで幅広いジャンルで数多くの作品を手がける。
2008年、第19回福岡アジア文化賞大賞を女性で初めて受賞。
2020年ヴェネチア映画祭では生涯功労賞の金獅子賞受賞。
「香港アカデミー賞」と呼ばれる香港電影金像奨最優秀監督賞に6度、金馬奨最優秀監督賞に3度輝く。
フィルモグラフィー
- 『瘋劫(The Secret)』 1979年/監督/台湾電影金馬奨最優秀撮影賞・最優秀編集賞
- 『望郷/ボート・ピープル』1982年/監督/香港電影金像奨 最優秀監督賞 最優秀作品賞
- 『客途秋恨』1990年/監督/アジア・太平洋映画祭最優秀作品賞/台湾電影金馬奨最優秀脚本賞
- 『女人、四十。』1995年/監督・製作/香港電影金像奨 最優秀監督賞 最優秀作品賞
- 『男人四十』2002年/監督・製作/アジア映画批評家協会賞最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀助演女優賞/台湾電影金馬奨最優秀助演女優賞・最優秀脚本賞・最優秀新人俳優賞他
- 『おばさんのポストモダン生活』2007年/香港電影評論学会最優秀監督賞 最優秀作品賞最優秀女優賞
- 『桃(タオ)さんのしあわせ』2011年/監督・製作/台湾電影金馬奨 最優秀監督賞他多数
- 『黄金時代』2014年/監督/香港電影金像奨 最優秀監督賞
登場人物
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ナンサン・シー 施南生
1951年8月8日~。香港生まれ。映画プロデューサー、プレゼンター。香港の映画産業に長年携わり、とりわけ1970年代後半以降の香港の映画シーンに大きな貢献を果たした。製作作品に『ダブルチーム』(1997年/ツイ・ハーク監督)、『インファナル・アフェア』(2002年/監督:アンドリュー・ラウ=アラン・マック)、『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』(2013年/ツイ・ハーク監督)など多数。
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ツイ・ハーク 徐克
1950年2月15日~。映画監督。ベトナム生まれ。幼少期をサイゴンで過ごす。13歳より8ミリ映画を撮り始める。ベトナム戦争の難民として1966年に香港に渡り、後、米国の大学で映画を学ぶ。ニューヨークで新聞の編集に携わり、チャイナタウンのローカル局向けにドキュメンタリーやニュース映画を撮った後、1977年に香港に戻る。1979年にホラー・アクション映画『蝶變』で監督デビュー。『蜀山奇傅 天空の剣』(1983年)で、今や香港映画の代名詞と言われるワイヤー・アクションをいち早く取り入れた。1984年に映画製作会社<電影工作室>を設立し、『男たちの挽歌』シリーズなどヒット作を多数プロデュースし、“香港のスピルバーグ”と称されている。
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フルーツ・チャン 陳果
1959年4月15日~。映画監督、脚本家、プロデューサー。中国広東省海南島生まれ。5歳の時に香港に移住。映写技師など十数種の職業を経て、1981年より“香港フィルム・カルチャー・センター”で学ぶ。後、助監督や製作コーディネーターとして活躍。1991年、初長編映画『大閙廣昌隆』を手掛け、1994年には中国返還が迫る香港を舞台とした青春映画『メイド・イン・ホンコン』を低予算で完成させ、香港の若者を中心にヒット、しロカルノ国際映画祭審査員特別賞、ナント三大陸映画祭グランプリ、香港電影金像奨最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀新人賞など各国の映画祭で絶賛された。
主な監督作に『ドリアン ドリアン』(2000年/金馬奨脚本賞、香港電影金像奨脚本賞他多数受賞)『ハリウッド★ホンコン』(2001年/金馬奨監督賞他多数受賞)『ミッドナイト・アフター』(2014年)など。 -
ティエン・チュアンチュアン 田壮壮
1952年4月1日~。中国の映画監督、プロデューサー、俳優。北京市生まれ。1930年代に活躍した有名俳優、田方(ティエン・ファン)と、于藍(ユイ・ラン)の次男として誕生。両親はそれぞれ映画スタジオの所長でもあった。両親が文化大革命中に厳しい弾圧を受けたため田壮壮は下放された吉林省で青春時代を送った。軍隊での3年間の任務中、従軍カメラマンに写真を教わり、アマチュア写真家としてキャリアをスタート。1978年北京電影学院に入学。同期にチェン・カイコー(陳凱歌)、チャン・イーモウ(張芸謀)ら。監督作『盗馬賊』(1986年)や『青い凧』(1993年)が国際的に高く評価される。『青い凧』は中国当局の批判を受け、以後10年間、映画を撮ることを許されなかった。2000年代になり田壮壮は中国映画の最前線に戻り、伝記映画『呉清源 極みの棋譜』(2006年)やアクション映画『ウォーリアー&ウルフ』(2009)など監督した。主な監督作にフィルモグラフィに『清朝最後の宦官/李蓮英』(1991年/ベルリン国際映画祭審査員特別賞受賞)、『青い凧』(1993年/東京国際映画祭東京グランプリ受賞)、『春の惑い』(2002年/ヴェネツィア国際映画祭サンマルコ賞受賞)など。
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ホウ・シャオシェン 侯孝賢
1947年4月8日~、中国広東省出身。台湾の映画監督。1歳で家族とともに台湾へ移住。スクリプター、照明などを経て助監督に。同時期に映画の脚本を書きはじめ、1980年『ステキな彼女』で監督デビュー。エドワード・ヤン(楊徳昌)などと並び、1980年代<台湾ニューシネマ(新電影)>を担う代表的な監督の一人。2015年、8年ぶりの長編映画にして自身初の時代劇アクション『黒衣の刺客』(妻夫木聡出演)で第68回カンヌ国際映画祭監督賞受賞。2020年、第57回金馬奨生涯功労賞受賞。主な監督作に『冬冬(トントン)の夏休み』(1984年)、『悲情城市』(1989年)、『好男好女』(1995年)、『憂鬱な楽園』(1996年)、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998年)など。カンヌ国際映画祭でノミネート作品多数の台湾が世界に誇る監督である。
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アンディ・ラウ 劉徳華
1961年9月27日~。香港出身の俳優。アン・ホイ監督作『望郷/ボート・ピープル』(1982年)で映画デビュー。後、『いますぐ抱きしめたい』(1988年)や『ゴッド・ギャンブラー』(1989年)、『欲望の翼』(1990年)などの香港映画の話題作に出演し、人気と実力を兼ね備えたトップスターのひとりに。1991年製作会社”天幕”を設立。『メイド・イン・ホンコン』(1997年/監督:フルーツ・チャン)などで製作総指揮を手がける。主演作『インファナル・アフェア』(2002年/監督:アンドリュー・ラウ+アラン・マック))が世界的大ヒットを収め、06年にハリウッドリメイクされる。『桃(タオ)さんのしあわせ』(2011年)では久しぶりにアン・ホイ監督作に出演した。
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ジャ・ジャンクー 賈樟柯
1970年5月24日~。中国の映画監督、脚本家、プロデューサー。中国山西省汾陽市生まれ。チェン・カイコー(陳凱歌)監督の『黄色い大地』に衝撃を受け映画を志す。1994年初の短編『有一天、在北京』を製作。95年に仲間らとインディペンデント映画の製作グループを立ち上げ、ビデオ作品『小山回家』(55分)を監督し、香港インディペンデント映画賞金賞を受賞し注目を集める。97年に北京電影学院の卒業製作『一瞬の夢』を監督し、98年ベルリン国際映画祭最優秀新人監督賞とNETPAC賞、釜山国際映画祭やナント三大陸映画祭でグランプリを受賞するなど国際的に大きな注目を集める。2000年オフィス北野と提携し、同社プロデュースの元『プラットホーム』を製作。1980年代の中国で生きる4人の若者を描き第57回ヴェネツィア国際映画祭NETPAC賞、ナント三大陸映画祭、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭のグランプリ等各国の映画祭で受賞。主なフィルモグラフィに、『長江哀歌』(2006年/ヴェネチア国際映画祭金獅子賞)『罪の手ざわり』(2013年/カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞)など。
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シルヴィア・チャン 張艾嘉
1953年7月22日~。台湾出身の女優、映画監督、歌手。1973年映画『いれずみドラゴン 嵐の決斗』で女優デビュー。後、1976年『碧雲天』で第13回金馬奨最優秀助演女優賞、1981年『我的爺爺』で第18回最優秀主演女優賞、1986年『最愛』で第23回最優秀主演女優賞受賞、“Forever and Ever”(2001年/レイモンド・トー監督)で香港電影金像奨最優秀主演女優賞受賞など数々の作品で女優として高く評価される。一方『舊夢不須記』(1978年)で映画監督としてもデビュー。1995年に脚本・監督を務めた映画『少女小漁』が第40回アジア太平洋映画祭最優秀作品賞、最優秀脚本をダブル受賞。1999年の監督作『君のいた永遠(とき)』(芸術監督:マン・リムチョン)が香港電影金像奨最優秀脚本賞受賞。ベルリン国際映画祭をはじめ世界各地の映画祭で審査員長を務め、歌手としても活躍。1992年のアルバム『愛的代価』に収録された表題曲は中華圏全域で大ヒットし、今も数々のシンガーにカバーされる名曲である。
- 参考資料
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- 各人物wikipedia/allcinema/映画.com/imdb
- 福岡アジア文化省2008年受賞者(アン・ホイ)
- 中国国際放送局(シルヴィア・チャン)
上映情報
都道府県 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
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東京都 | K's cinema | 03-3352-2471 | 上映終了 |
神奈川県 | 横浜シネマリン | 045-341-3180 | 上映終了 |
千葉県 | キネマ旬報シアター | 04-7141-7238 | 上映終了 |
神奈川県 | あつぎのえいがかん kiki | 上映終了 | |
北海道 | シアターキノ | 上映終了 | |
青森県 | シネマディクト | 017-722-2068 | 上映終了 |
栃木県 | 宇都宮ヒカリ座 | 028-633-4445 | 上映終了 |
愛知県 | シネマスコーレ | 052-452-6036 | 上映終了 |
長野県 | 上田映劇 | 0268-22-0269 | 上映終了 |
大阪府 | 第七芸術劇場 | 06-6302-2073 | 上映終了 |
京都府 | 京都シネマ | 075-353-4723 | 上映終了 |
兵庫県 | 元町映画館 | 078-366-2636 | 上映終了 |
広島県 | 横川シネマ | 上映終了 | |
大分県 | シネマ5 | 2022年5月22日(日)〜 | |
鹿児島県 | ガーデンズシネマ | 099-222-8746 | 上映終了 |
コメント
アン・ホイ監督の一代記とも言えるドキュメンタリー。屈託なく笑うその笑顔(笑い声)は、素敵だ。だが笑顔の裏側には、辛酸を舐めた波乱万丈の人生が秘められている。
そして彼女の作品は、セルフドキュメンタリーならぬセルフドラマであり、だからアン・ホイ監督は社会派ならぬ人間派監督なのである。
香港の大巨匠監督を、こう呼ぶのは失礼だと思うが、あえて親しみを込めて、言いたい。おばちゃん監督、万歳!と。
原一男さん(映画監督)
歴史の狭間でもがく人々を描き続けるアン・ホイ。彼女が、その作品が、私たちになにかホッとするものを与えるのはなぜか。流れ着き、出会った人々が助け合ってきた香港だからこそ、アン・ホイが生まれたのだ。
阿古智子さん(東京大学総合文化研究科教授)
難民、女性、日本人の血―
揺れ動くアイデンティティの中で、アン・ホイは、ひたすら描き続けた。
ここに懸命に暮らす普通の人々の姿を。
苦悩と激しさを豪快な笑顔の下に潜ませるその姿は
「香港人」そのものだ。
倉田徹さん(立教大学法学部教授)
作品のどこかに必ず孤独な漂泊者の視線が介在すること。師父キン・フーからアン・ホイへ、中華文芸に精通した「文人」監督の系譜があること。珠玉の庶民ドラマ二部作『生きていく日々』『夜と霧』の舞台裏がしっかりと語られるのも嬉しい。
石坂健治さん
(東京国際映画祭シニア・プログラマー/日本映画大学教授)