EUフィルムデーズ2023上映作品『マイ・ファミリー~自閉症の僕のひとり立ち』

ケース・モンマ、42歳自閉症。自立のススメ─

公開記念トークイベント決定‼ 新宿K’s cinemaにて

監督:モニーク・ノルテ

出演:ケース・モンマ/ヘンリエッテ・モンマ/ヴィレム・モンマ
2023年/オランダ/カラー/83分/ドキュメンタリー
原題:Kees vliegt uit 英題:A place like home
EUフィルムデーズ2023上映時邦題:ケースがはばたく日
※監督の許可を得てオリジナル版
(105分/EUフィルムデーズ2023上映版)より短縮しております。

後援:オランダ王国大使館
Embassy of the Kingdom of the Netherland
一般社団法人 日本発達障害ネットワーク
一般社団法人 日本自閉症協会

日本版字幕:吉川美奈子 配給:パンドラ

文部科学省特別選定 青年向き/成人向き 令和5年11月6日
文部科学省選定 少年向き 令和5年11月6日
厚生労働省推薦

11/25(土)~12/8(金)、新宿K’s cinemaにて上映

Introduction イントロダクション

42歳、自閉症のケース・モンマは
自立できるのか?

実家の離れで長年“半分自立”した暮らしを送ってきた自閉症のケース・モンマ(42歳)。365日両親のサポートのもと生活してきたが、かいがいしく世話をしてくれる両親はいつしか80代に。“本当に自立”すべく一人暮らしをすることにしたが、その道は前途多難。外的刺激に敏感なケースには、天気やちょっとした音でも非常に大きな不安の種。そして、我が子のサポートのため人生を捧げてきた母は、息子をそばに置いておきたがっているのだ・・・。連絡係のボランティアとの交流、父の入院など、モンマ家で起こる様々な出来事を丹念に描きながら、「自立」の道のりを映し出す。果たしてケースは「自立」できるのだろうか?

8年間にわたる撮影で描き出される
ある親子のかたち

撮影中に50歳を迎えたケース。両親はともに80歳を超えている。最近母親には認知症の兆候が現われ始めた。変わっていく両親を目の当たりにし、パニックに陥るケースに、自分たち亡きあとも安心な暮らしをさせてやりたいと願う両親だったが…。“共生関係”とも言えるほど独特の信頼関係を築いてきた親子の〈自立〉は一筋縄ではいかない。親こそ“子離れ”できるのか?〈自立〉を目指す家族の姿を時にユーモラスに、時に赤裸々に映し出している。

前作『ケースのためにできること』をオランダで450万人が見た
モニーク・ノルテ監督待望の新作!

監督とケースの出会いは1997年。以来、26年間にわたり交友関係を続け、ケースと両親の関係を撮り続けてきた。前作『ケースのためにできること』(EUフィルムデーズ2020上映時邦題)は、本国オランダで延べ450万人が見、ケースは一躍「時の人」となり、のちにTVシリーズ化される程人気を呼んだ。本作では、ケースが得意とする絵画の制作風景や、趣味のNゲージに熱中する姿など、日常の風景や魅力的な人柄までありのままに映し出している。

About 作品概要

2008年。自閉症のケース・モンマ(42歳)は、実家の隣の離れで“半分自立”した暮らしを送っている。しかし、高齢になってきた両親はいつかは先に逝ってしまう。彼の両親は、ケースに完璧な家庭環境を与えることに人生を捧げてきたが、ケースの将来はどんどん不透明になっていく。そこでケースは、“本当に自立“するべくひとり暮らしをすることにした。父は応援してくれている。母は穏やかに見守っている。本作は、ケース・モンマと家族の紆余曲折の「自立を目指す日々」を、ありのままのケースの姿、そして家族との生活に寄り添いながら丹念にすくい取る。母親に激怒したり、自分に落胆したりしながらも撮影中に50歳を迎えたケース。果たして彼の〈自立〉は実現するのだろうか。

Informaion
about Kees Momma
ケースを知るためのガイド

  • ケース・モンマ誕生

    ケースが生まれた1960年代、オランダでは自閉症についてほとんど知られていなかった。病院は、ケースを両親のもとから離し、終生精神病院の閉鎖病棟に預けようとした。しかし、ヘンリエッテとヴィレムは病院の勧めを拒否し、自分たちの解決策を考えた。自宅でケースを世話し、生活を適応させ、彼を守り育てるのだ。今、ケースは庭にある離れで暮らしている。彼は母親から目と鼻の先しか離れておらず、些細なことでも何でも母親に相談する。

  • 「ふむふむ」と言わないで

    外的刺激に非常に敏感なケース。舌鼓や鼻をすする音、父が話す時に立てる音にも我慢ならないが、なかでも苦手なのは「ふむふむ」という音、そして天候の話だ。気候変動についてのニュースや雑誌で不安になったケースには、気候の話はご法度である。そして彼は出会った人に必ず警告する。「ふむふむ」と言わないでくれ、と。

  • 両親の使命感~ケースを守るために~

    ケースが生まれた時、医師たちは、ケースの行動を母親が母乳を与えるのを拒否したせいだと非難し、精神病院に入院させるよう勧めた。そのためヘンリエッテは医療関係者に対する根強い不信感を抱いていった。この時から両親の使命は、ケースに幸せな生活を与えることになった。父はケースが不自由することのないよう、一家の経済的安定を確保することを使命とした。そして、息子の病気についてもっと知ろうと決意し、「オランダ自閉症協会」(the Dutch Society for Autism)を設立した。ヘンリエッテは、息子のケアを天職と考え、残りの人生をケースに捧げた。ケースの幸せは完全に母親の世話にかかっており、ヘンリエッテは母親であり介護者であるという役割に自らのアイデンティティを持っている。

  • 母と息子の“共生関係”

    ケースと母親はコンビである。ふたりで一つの文章を書くほどなのだ。ケースは「父親よりも母親の方が大切」と言ってはばからない。ヴィレムは、「妻とケースは共生している。ケースは母親なしではやっていけない。だからこの関係は必要なのだ」と説明する。しかし、それは父ヴィレム自身がある意味「部外者」であり、親として夫として対処するのが難しいということでもある。

  • ケースの”新しい家”

    ケース45歳の時、父は息子のために家を探す時期が来たと考えた。息子が自立した生活を送れるようになることを願って。一方、母によれば、ケースが守られた環境で生活を送るには、今の状況がベストなのだという。新居を探すため、両親は裕福な市民しか買えない別荘のあるホリデーパークを度々訪れていたが、思いがけず、裕福な友人たちがケースを助けたいと新居を購入してくれた。この新居は実家から徒歩圏内だが、ケースがこの家を使い始めるまでには1年かかった。一方母は、ケースは決して実家を出ることはないだろうと確信している。

  • アーティストとしての一面

    ケースはカリグラフィや絵画、模型の制作に才能がある。定規とルーペを携え、写真と見まごうほど精細な絵を完成させる。彼は自らの作品を販売し、収入としている。本作内でも彼が顧客のために絵を製作する様子が収められている。

Character 登場人物

  • ケース・モンマ Kees Momma

    1965年6月22日、オランダ、ハーグ郊外のワッセナー生まれ。
    3人兄弟の末っ子として育つ。9歳のとき、テレビで自閉症を取り上げた番組を見て、自分が自閉症であることを自覚。後に検査で自閉症だと診断された。マヴォ・ディプロマ(一般中等教育終了証)を取得し、自治体の文書館で働くように。カリグラファー、アーティストとしての仕事もこなす。また、グライダーのパイロット免許を所持しており、飛行機の模型も製作する。1996年、自伝 “En toen verscheen een regenboog - How Ik mijn autistische leven ervar”(そして虹がかかった─自閉症の人生をどう体験したか)を出版。1999年に続編“Achter de onzichtbare muur - een autist op reis door het leven”(見えない壁の向こうに-ある自閉症者の人生の旅)を出版。2014年、既刊の2冊をまとめた”A Journey through Kees’s Life“を出版している。

Director 監督

  • モニーク・ノルテ Monique Nolte

    オランダのドキュメンタリー作家。2017年より、ドキュメンタリーを通じて社会問題の解決を目的とするプラットフォーム「Doclines」CEO。
    初長編監督作品は、ケース・モンマを撮った“Trainman”(1998年)。1997年にモンマ家と交流を始めて以来、長年にわたりケース・モンマと家族を撮り続けている。
    ケースを撮った前作『ケースのためにできること(Only the best for our Son)』(2014年)は世界中で上映され、オランダの国営ドキュメンタリー・チャンネル「2Doc」の、過去5年間のベスト・ドキュメンタリーに選出された。さらに、テレビ初放送後、同作品はソーシャルメディアで280万ビューを記録し、2日間トレンドトピックとなった。公式フェイスブックページでは、自閉症当事者を含む10万1000人以上のコミュニティが、ケースの人生をフォローした(2014年時点)。オランダではケースは一躍「時の人」となり、自閉症がメディアの注目を浴びた。同作は、自閉症に対する認識を深め、関連するタブーや羞恥心を減らすことに貢献した。このドキュメンタリーは、専門家や警察の研修に使われたり、自閉症やその他の障害を持つ子どもを持つ親を支援するためにも用いられている。また勉強会や教育目的で定期的に上映されている。またオランダで過去最多の約450万人が視聴した大ヒット作品でもある。
    最新ドキュメンタリーである『マイ・ファミリー~自閉症の僕のひとり立ち(A Place like Home)』(2023年)は、オランダの主要ストリーミング配信会社「Videoland」で最も視聴された作品のひとつであり、現在、オランダ映画祭ゴールデンカーフ賞に選出された。

    フィルモグラフィー
    2023年 『マイ・ファミリー~自閉症の僕のひとり立ち』
    (監督)
    2022年 ”Nikki”(監督)
    2017年 ”De Verdedinging”(TVミニシリーズ/監督)
    2014年 『ケースのためにできること』”Only the Best for Our Son”(監督)
    2008年 ”Een Bitterzoete Veeleiding”(監督)
    2007年 ”A Bittersweet”(監督/ドキュメンタリー映画)ゴールデンカーフ賞ノミネート。
    1998年 ”Trainman”(監督)

Reviews コメント

  • 時に爆笑しつつ全編笑って観た。たくまざるユーモアだ。ケース・モンマは自閉症を自覚しているからこそ、いつも本気だ。彼の感情、言葉がストレートに心地よく響く。ああ、人間って愛しいと思わせてくれる。幸せ感をいっぱい持たせてくれる、神様からのプレゼントのような珠玉の作品だ。

    原一男(映画監督)

  • 日常生活の中で、淡々と自閉症の発想が展開されていくドキュメンタリー映画。父親がオランダ自閉症協会を設立したとのこと、日本での設立も1970年頃であり、時代背景が近いことが分かります。家族だけでなく地域に根差した支援の必要性が感じられました。

    市川宏伸
    (日本発達障害ネットワーク理事長/日本自閉症協会会長)

  • ケース・モンマ氏の時折の苛立ち
    彼はついそれを口走る
    今 僕は79歳 頑固な老人になると
    彼の心持ちが分かるのです
     「そうなんだ そうなんだ」と
    思いながら映画を見続けました
    (新しい友人に巡り会えた気分です)

    久米宏
    (フリーアナウンサー)

  • 高齢化に伴う「8050問題」は日本だけの課題ではない。SDGsと同じく、人間社会を維持するため人類全体で深く考えるべきことなのだ。他人事として見過ごしてしまうわけにはいかない! と自覚してこの映画と向き合ってほしい。

    寺脇 研
    (元文部科学省審議官(生涯学習政策・ゆとり教育担当))

  • 芸術や創作の本質に関わることも感じてしまった。ケース・モンマは白黒〇✕をはっきりさせないと気が済まないので、相手が「ふむふむ」と適当に相槌を打ちことが許せないのであり、自分でコントロールできず勝手に変化する天気の寒暖にもガマンならない。妥協しないのだ。欲を言えばちょっと山下清みたいなあの細密画をじっくり見たかったなあ。

    石坂健治
    (東京国際映画祭シニア・プログラマー/日本映画大学教授)

  • 老いゆく両親の姿に混乱する息子。息子の自立を望みつつも彼から離れられない両親。たがいに必要としあう共生の日々は永遠には続かない。けれど、誰の助けもなく、ひとりだけで立っている者などこの世界に存在しない。真の自立とはどのようなものであるべきか? ケース・モンマの家族の物語がかくも心を打つのは、それが私たちの物語でもあるからだ。

    小野正嗣(作家、フランス文学者)

  • こんなに深い、愛もあるのか。愛の形はさまざまか。私の次男はダウン症ですが、成人したらとっとと自立し巣立ってほしいと願っている私とは大違いの母がこの映画の中にいた。表現こそ真逆だけれど、どちらにしてもそれは母の愛なのです。

    奥山佳恵(女優、タレント)

  • ケースの言動に驚いたり笑ったり呆れたりしつつ、その一人の人間としての魅力に惹かれ、観終わってからもずっと彼やその両親のことが気になってしょうがない。誠実さと粘りを持ってそこまで身近に感じさせる作品に仕上げた、ノルテ監督の功績も高く評価したい。

    青木眞弥(『キネマ旬報』元編集長)

  • 「独り立ちの強制はできない」と父。この言葉をかみしめて最後の結末を味わってほしい。自閉症の方を追い詰めない、穏やかで忍耐強く、愛情深い家族・親族のやりとりは、障害の有無に関わらず、とても素敵で必見の価値あり。

    涌井 恵(白百合女子大学・准教授)

Theaters 上映情報

地域 劇場名 公開日 備考
東京都新宿K’s cinema上映終了
神奈川県横浜 シネマ・ジャック&ベティ上映終了
埼玉県川越スカラ座上映終了
愛知県名古屋シネマスコーレ上映終了
長野県長野ロキシー上映終了
京都府アップリンク京都上映終了
大阪府シネ・ヌーヴォ上映終了
兵庫県元町映画館上映終了
佐賀県シアターシエマ上映終了

閉じる