イントロダクション
“わたしと同じような脚の人っている──?”
極めてまれな障がいを持つ気鋭の女性監督、
エラ・グレンディニングが
4年にわたり自ら撮影・監督した
類まれなる“セルフ・ポートレイト”ドキュメンタリー
股関節がなく、大腿骨が短い20代のイギリス人映画監督エラ・グレンディニング。「障がい」を意識せず伸び伸びと育てられたが、「自分だけ異質」という感覚がぬぐえない。好奇の目線を無遠慮に投げかけてくるこの世界で、自分を肯定するためには何が必要か?その答えを求め、エラはSNSを通じ‟自分と同じ障がいがある人”を探すことにした。撮影中の予期せぬ妊娠、出産、子育てや、シングルマザーの母への率直な問いかけ、子どもを連れての渡米など、エラが経験する様ざまな出来事や思いが丁寧に綴られる。母となったエラは何を考えるのだろうか?果たして目標は達成できるのだろうか?自分らしい生き方を模索する、4年間に及ぶ旅路を記録したセルフ・ドキュメンタリー!
<障がい者差別(エイブリズム)>が蔓延する世界で
すべての“わたし”に投げかけられる力強いメッセージ
障がいの“治療”のため、大きな手術を何度も受ける子どもたちの姿に直面したエラは、「このままではいけないのだろうか?」と改めて悩む。四肢延長と再建手術の国際的権威、ペイリー医師は「治療すれば人生が劇的に改善される」と言う。障がいの“治療”と一体となって存在する〈障がい者差別(エイブリズム)〉に対峙するエラ。その常に前向きであろうとする姿からは、差別に反対する明確なメッセージが受け取れる。翻ってそれは「普通」とは何か、「非障がい者」が優先される社会とは何かを問うものだ。また一方で、今を生きるすべての“わたし”にエールが送られているような深い感動を呼び起こす本作は、サンダンス映画祭をはじめとして各国の映画祭で高い評価を得た。
作品概要
“わたし”が“わたし”を肯定するために ─
4年間におよぶ “わたし”の物語
股関節がなく、大腿骨が短い20代のエラ・グレンディニング。彼女の障がいは珍しいため、同じ外見の人には出会ったことがない。そこでエラは、SNSを通じて自分と同じ障がいを持つ人を探すことにした。“わたしと同じような脚の人っている?”とfacebookに書き込み。エラは自分と同様、両脚に障がいがある「大人」を見つけることにこだわっている。こうして2018年、エラの‟自分と同じ障がいを持つ人をSNSで探す旅“が始まった。そんなある時、マッチングアプリで出会ったパートナー、スコットとの子を妊娠していることがわかり…シングルマザーとしてエラを育てた母や、親友であり自閉症のナオミ、SNSを通じた“人探し“によって知り合えた、障がいのある仲間たちとの出会いを通して、エラは新しい世界と自分を知っていく。脚を切断し、子どもの「障がい」を「治療」するべきか悩む親たち、「治療すれば人生は劇的に改善される」と言う医者。はたして「わたしのからだ」は「治療」しなければならないのか ─?<障がい者差別(エイブリズム)>が根強いこの社会で、エラが自分を肯定するために出した一つの答えとは。
出演/監督
エラ・グレンディニング
Ella Glendining
1992年1月13日生まれ。「本当の障がい者の物語を伝える」ことを信条に活動する脚本家、監督。ドキュメンタリーとフィクションの垣根を超えて活躍。2018年から22年までBFI(British Film Institute/英国映画協会)の障害者スクリーン諮問グループ(Disability Screen Advisory Group)メンバー。スクリーン・インターナショナル(Screen International)による”Stars of Tomorrow 2020”に選出される。これまでに、アーツ・カウンシル・イングランド、ナショナル・パラリンピック・ヘリテージ・トラストなどより数々の支援を受け、短編映画の脚本と監督を手がける。短編映画“Like Sunday”(2017年)では、初脚本・監督・主演。初長編監督作となる『わたしの物語』は、BFI Doc Society、Chicken and Egg Pictures、クリエイティブ・スコットランドの支援を受け製作された。現在、障がい者を主人公とした長編歴史ドラマと、脚本、共同監督、主演も務めた短編コメディ・ドラマ‟Pyramid of Disunion”を製作中。俳優としても活躍している。
コメント
※順不同
-
前向きさ、希望と不安を分かち合おうとする姿勢、そしてエイブリズムをストレートに表現した作品。私たちがいまだ、障がいを進んで受け入れるのではなく「治す」べきだとみなしていることを、鋭く論証し、強く心に響きかける。
Screen Daily
-
冷静な誠実さと知性で、障がいがある20代の女性としての経験を記録した稀有な作品。
Guardian
-
障がい者差別と、他者とのつながりを模索する姿を記録した、親密で愛すべき映画。 障がいの「治療」の必要性に疑問を投げかける。
Sight and Sound
-
踊って、絵を描いて、友だちとワインを飲み、子育てする。ただのありふれた毎日なのに、どうして障害者のことになると、大変、かわいそうと言われるの? 障害を否定したり、神聖化するのではなく、ありのままの一人の女性のドキュメンタリー
伊是名夏子(コラムニスト)
-
冒頭から愛おしいほどありのまま全開。
テーマは深くシリアスだがチャーミングでパーフェクトな作品。障がい者自身が
「わたしはこのままではいけないのか?」と
エイブリズム(非障害者優先主義)に問いかける。自分自身の「生」の肯定の物語。
門秀彦(作家)
-
「自分の体が好き」と肯定しながら、「自然分娩で一人前になれる気がする」と“普通”にこだわるエラ。それでも仲間との対話の中で何が“障がい”を作り出しているのかに気づいていく。彼女の旅を追体験しながら、わたしの中の“障がい”と“普通”の壁が溶け出していくのを感じた。
浜田敬子(ジャーナリスト)
-
外に出ると異星人の気分 ─
平凡なカップル、ありのままの親子、そこに健常者のヒーローは登場しない。
”同じ体の形” を探し求める彼女の姿に何度も何度も共感した。
でも、誰かと同じであることを求めるのは
いつだって社会ではないだろうか。
「障害」は「何処にあるか」を改めて考え、見つめるためにこれ以上はない傑作。さしみちゃん(DJ・インフルエンサー)
-
歌っていても
子育てをしていても
ただ生きているだけで
欠けている自分に気付かされる
そして仲間の大切さを知る
愛する人に救われる
「でこぼこじゃない世界なんて味気ない」
と言ってくれる主人公の真の言葉に胸が詰まり
ぽろぽろ涙がでた。
少しずつでいいから自分を好きになろう!と思える映画です。一青窈(歌手)
-
この世界は障害者をただの人にしておいてはくれない。自分は何者で、どのように生きるべきなのかを常に問うてくる。この作品は、その理不尽さと残酷さに立ち向かうエラの冒険の記録だ。冷静だけど勇敢で、穏やかだけど熱いエラの姿がこの目に焼きついて離れない。
トミヤマユキコ
(マンガ研究者/東北芸術工科大学准教授) -
手の届かないスイッチとスイッチに届かない手、どっちが間違っている?
窮屈でムリヤリなのは社会のほう。
わたしたちのエイブリズムを見つめ返すエラの視線が、わたしに光と力をくれる。
わたしは唯一絶対無二だけど、たった独りじゃないんだ。市川沙央(作家)
-
障害の軽減、改善への願いは、時に障害を否定すべきものとして捉える価値観と表裏をなす。
自身の体の異形性を肯定するエラは、手術によって「正常」なものに近づけようとする動きに警鐘を鳴らす。
本作は、今後発展させるべき障害観の学びのテキストである。二通諭
(札幌学院大学名誉教授/
一般社団法人障害映像文化研究所顧問)
上映情報
地域 | 劇場名 | 公開日 | 備考 |
---|---|---|---|
東京都 | 新宿K’s cinema | 2024/6/22(土)〜 | |
東京都 | シネマ・チュプキ・タバタ | 2024/10/17(木)〜10/29(火) | *16日(水)、23日(水)、30日(水)休映 |
神奈川県 | シネマ・ジャック&ベティ | 2024/9/7(土)〜9/13(金) | |
北海道 | シアターキノ | 2024/9/13(金)のみ | |
栃木県 | 小山シネマロブレ | 2024/7/12(金)〜 | |
栃木県 | 宇都宮ヒカリ座 | 2024/8/30(金)〜 | |
愛知県 | あいち国際女性映画祭2024 | 2024/9/6(金)のみ | 16:30~ 会場:ミッドランドスクエア シネマ2 |
愛知県 | シネマスコーレ | 2024/10/12(土)〜10/18(金) | |
京都府 | アップリンク京都 | 2024/8/9(金)〜 | |
大阪府 | 第七藝術劇場 | 2024/7/20(土)〜 | |
兵庫県 | 元町映画館 | 2024/7/27(土)〜8/2(金) | 連日10:00〜 |