日本映画検閲史 牧野守著 22,000円 版型A5/上製函入り/704頁 ISBN:4-7684-7814-X 2004年「週刊文春」出版事前差し止めの一件が大きな波紋を呼んだのは、“表現の自由”と “公権力の規制”という2つの拮抗する勢力のバランスを崩しかねない重大性が含まれていたからである。 ひとたび規制に傾くと、このバランスを元に戻すことは容易ではない。本書は映画が日本に上陸した1896年から1945年の間に行われた検閲の事実を、膨大な史料から克明に追求した成果である。その時々の体制がもつ政治的、道徳的、思想的な作為が、当時の第一資料を通じてはっきりと浮かび上がってくる。 すべての人が、インターネットというメディアを通じて情報の発信者となれる今日、“表現の自由とはなにか”を考える上でも、本書は貴重な参考書となるだろう。 |
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著者プロフィール 牧野守(まきのまもる) 1930年、樺太(サハリン)生まれ。映画の上映運動やテレビドキュメンタリーの演出などを経て、1970年代後半から映画史研究に取り組み、資料の収集・調査を始める。所蔵する約10万点の文献は「マキノ・コレクション」として世界的に知られる。『大正期キネマ旬報』『左翼運動雑誌』などの復刻版を18種・250巻刊行。国内外の映画研究者から深い信頼を得ている。 専門研究者のおすすめコメント 「日本映画文献学の最高権威、牧野守による本書は、読んでおもしろく、 映画史、文化史、司法史を研究する者にとって不可欠の参考書である」 「人類史上最も民主的と言われたヴァイマル憲法(1919年8月制定)は、もちろん検 閲を禁止していた。ところが、除外規定によって映画には検閲が許されたのだ。映画 の黎明期、伝説的な表現主義映画の時代に、早くも権力者たちは映画の社会的な力を 見抜いていたのである。 このエピソードひとつを思い起こすだけでも、「日本映画検閲史」という牧野守の精 緻な仕事の意味が明らかになる。それは、映画だけにとどまらず、表現文化の全領域 をつらぬく重要な示唆の宝庫というべき業績なのだ」 |