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Introduction イントロダクション
ミュージカルの金字塔『屋根の上のバイオリン弾き』の
バックストーリーを追った珠玉のドキュメンタリー!!
世界的に広く知られるブロードウェイ・ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』。日本でも森繁久彌や市村正親主演による公演が長年に渡り多くのファンを引き付け、2021年に公演開始から50周年を迎えている。物語の背景にはロシア革命前夜、ウクライナのユダヤ人一家の日常と苦難の歴史が垣間見える。本作はその成立過程を丹念に追い、映画化にあたり音楽を担当したジョン・ウィリアムズ(『E.T.』『ジョーズ』)、テヴィエ役のトポルや3人の娘役たち、ジュイソン監督自身へのインタビューなどを通して、幾世代にも渡って語り継がれる感動の名作の知られざるバックストーリーが明らかになる。
「あらゆる人のための映画に」
─ヒットミュージカルがスクリーンにのぼるまで
ショーレム・アレイヘムのベストセラー小説「牛乳屋テヴィエ」を基にしたミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』は、19世紀末のウクライナ地方に暮らすユダヤ人一家を描いた、胸を打つ感動の物語。激動の時代に翻弄されつつも懸命に生きる人々の姿は、見る者の心をとらえて離さない。画家マルク・シャガールもモチーフに描いた「バイオリン弾き」とは、故郷を持たないユダヤ人の魂とも言える存在だ。映画化を手掛けたノーマン・ジュイソン監督(『夜の大捜査線』『ジーザス・クライスト・スーパースター』)は、「この物語を誰もが見られるものにしたかった」と語る。映画は、家族の絆、愛、伝統、父と娘、別れ…人間にとって永遠のテーマを織り込み、涙なくしては見られない。
人気ミュージカルを映画として再構築し、帝政ロシア下のユダヤ人の生活をスクリーンに映し出したノーマン・ジュイソン監督の奮闘ぶりを、ユーモラスかつドラマチックに活写する。
About Movie 作品概要
「カット!その場で待て」「現像してくれ」とノーマン・ジュイソン監督の指示が飛ぶ。映画『屋根の上のバイオリン弾き』の1971年当時の撮影シーンだ。「ユダヤ人しか見に来ない」と言われた映画「屋根の上のバイオリン弾き」。だが、米「ニューヨーカー」誌の名物評論家・故ポーリン・ケイル氏が“最も力強いミュージカル映画”と絶賛したように世界的ヒットを収めた。なぜユダヤ人一家を描いた物語は世界的名作となったのか?
撮影から50年後、ジュイソン監督は「なぜ特に思い入れが?」との問いに「冒険だったから」と語る。年頃の5人の娘を持つ主人公テヴィエの物語には普遍的なテーマがあると振り返る。そんなジュイソン監督はトロント生まれ。「物心ついた時からユダヤ人になりたかった」という。故郷を追われたユダヤ人の歴史を映画に取り込み、舞台には不可能な形で描こうとしたのだ。
本作は、音楽を担ったジョン・ウィリアムズや主人公テヴィエを演じたトポル、3人の娘役たちへのインタビューやロケ地を巡る困難、舞台セットや撮影に凝らした数々の工夫などを丹念に追い、名作の舞台裏を解き明かし、あらゆる人の心を掴み続ける『屋根の上のバイオリン弾き』の知られざる魅力を明らかにする。
Director 監督プロフィール
ダニエル・レイム Daniel Raim 監督/製作/共同脚本/編集
ロサンゼルスのアメリカン・フィルム・インスティテュートに学ぶ。ハリウッドの黄金期を支えたアーティストに光を当てた"The Man on Lincoln's Nose"は、2001年アカデミー賞最優秀短編ドキュメンタリー映画賞にノミネート。2015年の『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』はカンヌ国際映画祭オフィシャル・セレクションでプレミア上映され、最優秀ドキュメンタリー作品に贈られるルイユ・ドール(金の眼賞)を受賞。劇場用作品以外にも、クライテリオン・コレクションのオリジナル・ドキュメンタリーも28本手がけ、ジョン・カサヴェテス、バスター・キートン、アンドレイ・タルコフスキー、ケリー・ライカート等の重要な監督たちを取り上げている。2019年、長編ドキュメンタリー"Image Makers: The Adventures of America’s Pioneer Cinematographers"を製作・監督。主なフィルモグラフィは下記。
2000年 | The Man on Lincoln's Nose (2001年アカデミー賞最優秀短編ドキュメンタリー映画賞候補) |
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2015年 | ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー (製作・監督・撮影・編集/カンヌ映画祭Golden Eye賞候補) |
2016年 | Dirty Beautiful (Depth of Field国際映画祭最優秀編集賞) |
Reviews コメント・海外評
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「屋根の上のバイオリン弾き」の上映から50年を経て、私たちが失い続けて来たものがなんだったのか、まっすぐ突き刺さって来るようで、泣けてたまりませんでした。
加藤登紀子さん (歌手)
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舞台版の演出・振付のジェローム・ロビンスは言った。「われわれは失われた時代と儀式を記録にとどめ、そして祝おうとすることが必要である」と。当時のユダヤ人たちの生活を再現しようとしたノーマン・ジュイソンの挑戦が今のウクライナと重なり涙が溢れた。
寺﨑秀臣さん (ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」演出家)
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圧倒的な言葉の力のすごさ!多くのアメリカ・ユダヤ人のルーツは、帝政ロシア時代の東欧世界だ。ホロコーストで失われたその世界のリアルな再現にかけた、俳優・スタッフ全員の熱量がほとばしる。50年前の撮影の想い出を生き生きと語る映画人の言葉がなんと魅力的かを再認識した。
市川裕さん(東大名誉教授)
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現在のウクライナを舞台にした、帝政ロシア時代のユダヤ人一家の物語を、ノーマン・ジュイソンは冷戦期にどのように映画化したのか。人種の垣根を越えるジュイソンの過去作を辿りながら、いまの世界につながる<物語>の全体が、少しずつ明らかになっていく。
梶山祐治さん(ロシア・ウクライナ・中央アジア映画)
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あまりにも幸せそうに「屋根の上のバイオリン弾き」の制作現場を回想するジュイソン監督、スタッフ、俳優たち。その笑顔には映画という集団創作の醍醐味がぎゅっと詰まっている。失われる故郷と終わってしまう撮影が重なり合って、寂しさと喜びが混ざり合う、人生のような映画。
上田洋子さん(「ゲンロン」代表)
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高校生の時に観て感激し、演劇部の部室で一人で全部の役を演じ歌い部員に映画の内容を語った思い出の映画の奥に秘められた、製作者たちとアーチストたちの内面を知り再び、泣いてしまった。
ウクライナを追われるユダヤ人たちの姿は過去の話ではない。世界は、宗教や人種を超えた「自由」と生きる権利を取り戻さなければならない。渡辺えりさん(女優・演出家・劇作家)